仕事について

メンタルフォロー|何をすればいいかわからない人に向けて解説|最低限必要な事

メンタルフォローについて何をすればいいかわからない?
と悩まれている方はいませんか
私も産業保健師を始めた頃は右も左もわからず困っていた時期がありました

今回は下記について書いていきたいと思います

  • メンタルフォローをする流れ
  • メンタル不調の理由を把握
  • メンタルフォローをする際の注意点
  • 4つのケアで考えていく
  • フォロー体制の構築

産業保健師は
従業員の健康診断の結果を基にフィジカル面でフォローをすることや
メンタル不調者に対して、メンタルフォローをします

フィジカル面のフォローは数値が結果で出てきているので
比較的にアドバイスをしやすいと思います

しかしメンタル面のフォローに関しては

どのようなことを実施したらいいの?
どのくらいの期間でフォローしたらいいの?
そもそも何に注意してフォローしたらいいの?

など目に見えいくところであるため
様々な疑問がでてくるところだと思います
特に産業保健師になったばかりの方などで
よく悩まれているのを目にします
私も産業保健師になったばかり同じでした

メンタルフォローで
これが1番正しい方法!これが正解!
というものはありません

例え模範的な対応をしたところで
必ずメンタル不調が改善する確証がないからです

従業員1人1人にあったメンタルフォローを
実施することが重要になってくると思います

メンタルフォローをする流れ

精神的に疲労困憊して、会社を休みがちになってしまった従業員に対して産業保健師にどのようなルートで連絡が入り、フォローしていくのかについて説明します。

①職場から、人事部または保健師に連絡が入る

産業保健師は、常に職場巡視をしているわけではないので従業員の異変に気づくことが難しいです。

なので常に職場の状況を把握している上司から連絡が入ります。

職場内のフォローのみで解決する場合であれば産業保健師のフォローは必要ありませんが、職場内で解決できない困難な事例もたくさんあります。

そのような場合、人事部や保健師に職場から連絡が入り本人と面談したり、必要であれば産業医面談、病院紹介をします。

②長期休暇が必要になった場合

メンタル面でフォローが必要な従業員と面談し、産業医または病院受診した結果“休暇を要する”と診断書が提出され休養開始となった従業員に対して、保健師は従業員の休暇中の状況を把握し上司と人事部と情報共有をします。これは安全配慮義務の面から実施しています。

従業員との連絡方法はメールや電話等でフォローをしていきます。休養している従業員と

連絡手段は相談して決めます。理由は、本人に休養に専念してもらうため、休養中負担にならない方法で連絡をとるようにします。

③職場復帰する場合

しっかり休養に専念したことで、心身ともに状態が安定してきて病院の主治医から“復職可能”の診断書が提出されたら、産業医面談を実施し従業員が①生活リズムが整っているか(定時まで働けるか)②復帰しても可能な精神状態・身体状態かの確認③復職を繰り返さないように従業員が休養中、病気とどのように向き合い復職した後、どのように就業に取り組んでいくのかの確認をします。産業医面談には人事部担当者と保健師も同席します。

長期休養(1年〜3年)している従業員に対しては、リワーク施設に通所してもらい職場復帰となるケースもあります。

リワーク施設とは

メンタル面で休養した従業員が、しっかり休養して心身が安定し復職できる状態になったときにスムーズ復職できるために会社に復帰する前のリハビリ施設みたいなところです。

リワーク施設ではストレスへの対処法を学んだり(認知行動療法やアサーション・トレーニングなど)休養前の生活リズムに戻すために、決まった日にち時間内で通い復職への準備を行う施設のことです。

リワーク施設は無料で実施できるところや病院でリワーク施設を設けていることころもあります。

④産業医面談を実施し復帰可能になった場合

面談結果を基に、産業医、人事部、保健師とで就業場所や配置転換、今後のフォロー体制を決めていきます。

復帰後の就業時間ですが、職場復帰可能になった従業員に最初から定時勤務をさせてしまうと、体調を崩してしまうリスクが高く再度休養してしまう可能性があります。そのためまずは、リハビリ勤務から開始します。例えば始めの1週間は午前中勤務からはじめ、徐々に定時勤務までという風に体を慣らして行きます。

復職後も、しばらくの期間は従業員のフォローを継続し、就業場所でしっかり働けているか体調の悪化がないか本人と上司に確認し情報共有をします。状態によっては1週間に1回、または2週間に1回とフォローしていき状態が安定し、休養前の状態まで戻ってきたらフォロー期間を1ヶ月に1回半年に1回と空けていき、フォローが必要ない状態まで安定してきたらフォロー終了とします。

メンタル不調の理由を把握

従業員が何でメンタル不調になったのか

そもそも、メンタル不調になった原因が何かをきちんと把握した上でフォローする必要があります

職場の人間関係なのか、業務内容なのか家庭問題、働く事が嫌だ……など様々な原因があります

働く事が嫌だとか、業務内容が合わないという従業員に対して産業保健師からフォローをしたとしても限界が出てきます

その場合は、産業保健師によるフォローではなく人事担当者によるフォローが適切だと思います

そのためにも、自己解釈せずに相手が何でメンタル不調になってしまったのかを聴く力を身につけることが大切です

従業員が話をしてくやすい部屋の環境をつくたり、質問をしたり産業保健師の雰囲気などを意識して対応していくことが重要です

メンタル不調者の意見に偏らずに冷静に話を聴く

メンタル不調者の話に共感しすぎたり、優しすぎる方はついつい同情してしまいメンタル不調者の意見に偏ってしまい「何て可哀想なんだろう」「職場が悪いんだろうな」と本人の意見だけで全て判断してしまう場合もあります

これでは、フォローとは言えないと思います

話を聴くことはとても大切ですが、聴きすぎてしまわないように常に冷静で中立な立場で話を聴くことが大切だと思います

メンタルフォローで重要なことは症状が再発しないように、本人自身でメンタル不調の原因を振り返ることができ解決策を考え行動していくことだと思います

フォローの意味を間違えないように注意してフォローをするようにすることが大切だと思います

情報共有とフォロー適任者

メンタル不調者のフォローで、情報共有は必ず大切だと思います

守秘義務の部分は守り、本人の同意を得た内容は関係部署と情報共有し、メンタル不調者が働きやすい環境で再度働ける様に支援していくことが重要です

メンタル不調者の主訴を情報共有した後、産業保健師からではなく上司や人事担当者がフォローした方がいい内容であれば主担当でフォローしてもらい、産業保健師は必要時、アドバイスやサポートをするようにしています

メンタルフォローをする際の注意点

急性期の場合はこまめに連絡を取るようにする

メンタル不調者の状態によってフォロー期間を変更することが大切だと思います

そのため当たり前ですが、急性期の方に対しては週1回や2週間に1回フォローをしていくようにし、状態が安定してきたら月1回など間隔を空けてフォローするようにしていました

フォローの方法にもよりますが、メールや電話などのフォローであれば就業時間内でも手短に済ませることができますが、面談となれば就業時間中に職場を抜け出しての面談となります

メンタル不調者の状態に応じてフォロー間隔も考えていかなければ、メンタル不調者の職場の同僚たちからしたら「いつまで面談続くの?急に抜けられたら困る」という思いが出てくる可能性もあります

そのため、ただ何となく2週間に1回のフォローと何日も継続するのではなく従業員の状態に合わせたフォローを実施することに注意していました

必要時は報告、連絡、相談は忘れずに実施

報告、連絡、相談はメンタルフォローに限らずどのような場面でも必須だと思います

分からないことも「まぁ、このぐらいで大丈夫だろう!」と自己判断で、適当な仕事をするのはご法度だと思います

忙しそうだから……話しかけにくいから……と報告、連絡、相談を怠るのではなく、職場や人事部に報告した方がいいことは後回しにせずに必ず報告するなど、当たり前のことはきちんと実施するようにしていました

深入りしすぎた、自己満足のフォローはしないようにする

メンタル不調者の気持ちに寄り添いすぎて、過剰なフォローをしないように注意する必要があると思います

ごく稀に、フォローしている自分に満足している産業保健師もいます

実際に今まで一緒に働いてきた産業保健師の中にフォローしている自分に酔っているのでは?と思う方もおられました

その方には、それは違うのでは?と指摘させてもらいました

メンタル不調者に対して過剰なフォローは相手の自立を妨げる行為だと思います
従業員が自らの心身の健康に気づき自分で自分の健康を守れることが1番の理想だと思います

自分自身でストレスにどう向き合っていくか、またストレスに対しての対処法を身につけていけるようにサポートする立ち位置が産業保健師の役割だと思います
従業員の自立を妨げる行為は行なわないように注意しています

相手に寄り添うことはとても大切ですが、メンタル不調者と適度な距離感を保ちながらフォローしていくことが重要だと思います

4つのケアで考えていく

メンタルフォローする際は、4つのケアの中の何が1番の原因かを考える

メンタルフォローをする上で、4つのケアを考えることは大切だと思います

また従業員が何が原因でメンタル不調を起こしているかを考えることも、とても大事なことです

例えば、職場ではラインによるケアもしっかりできており、従業員もメンタルクリニックに通院しており定期的に産業保健師とも面談を実施しているが、メンタル不調は継続している従業員に対して何が足りていないかと考えたとき、セルフケア能力が低いのでは?と見当がつきます

このような場合、他の3つのケアも継続していくが本人にセルフケアについて学んでもらう必要があると思います

メンタル不調者だから……と振り返りをさせずに周りのラインケアや産業保健師によるケアを強化したところで、本人がメンタル不調を繰り返す可能性も高いですし、職場からも不満が溜まる一方です

この見極めは、しっかりと意識してメンタルフォローを実施するようにしています

どの年代にも4つのケアについて講義を実施する

ラインケアは、管理監督者によるケアでは?と思われるかもしれませんが私は職場の同僚たちによるケアも、ラインケアなのでは?と考えています

上司によるケアが、あまり実施されていない職場があったとしても部下たちや同僚のフォロー体制があったから辛くても乗り越えることができたというパターンもあります

そのため4つのケアについて講義を実施する際は、ラインケアは管理監督者には当たり前ですがしっかりと説明をしますが、その他の従業員に対しても年代関係なくある程度、ラインケアについて説明をするようにしています

フォロー体制の構築

キーパーソンを決める

メンタル不調で休職中された従業員の方の中には「保健師と連絡を取り合うのは気が引けるな」「保健師だと緊張してしまって本音を言いにくいなぁ」と思っている方もいます。

そのため、休職中に連絡を取り合う相手を従業員に決めてもらう制度にしていました。会社に所属しており、本人が気軽に相談できる方部署の上司や人事部、同僚、産業保健師など誰でも構いません。

大切なことは本人が休職中に連絡を取れやすい相手を選んでもらうことです。

キーパーソンに選ばれた方は、本人と休職中の連絡を取り合う際どのような連絡手段を使うかを決めてもらいます。電話やメール、直接会って話を聞く方法でも何でも構いません。

本人としっかり話し合って決めてもらうようにしています。

キーパーソンに選ばれた方には、保健師よりメンタルケアの方法を説明をします。例えば、どのような流れでメンタルフォローをしていけばいいのか、禁止フレーズ、通院している病院名、内服薬、睡眠時間、食事、活動内容など会社側が把握しておきたい情報を伝えます。

しかし、必ず本人の状態に合わせて話を聞くように伝えます。本人の気持ちや状態を無視してこちら側がほしい情報だけを聞くのでは意味がありません。

メンタル不調者に対するケアで大切な休息を忘れないように伝えています。

情報共有を実施

メンタル不調の従業員がキーパーソンを選出した後、本人に必要最低限の情報交換を人事部、保健師、所属長と共有しても可能かの同意書を書いてもらいます。

やはり会社側も今後の本人の職場復帰を考えた際、現在の心身状況の把握は必要となります。

そのためにも同意書は必要となります。

同意書の説明は本人の誤解が生じないように丁寧に説明をするようにしています。

本人から同意が得た場合は、人事部・所属長・産業医、保健師とで記録を共有します。

記録用紙は簡単なエクセル表を使用していました。

内容は、キーパーソンが連絡を取った日にち連絡手段方法、面談時間、現在の状況などを記載するようにしていました。

また、キーパーソンの記録を確認して疑問に思うことや聞きたいことがある場合は随時、キーパーソンへフィードバックしていました。

人事部・所属長・産業医、保健師でキーパーソンの記録を確認した際は、確認済という記録を残すようにし情報共有を確実に行うようにしていました。

さいごに

復職面談の流れは、一般的には上記のような流れで実施しますが、企業によって様々なやり方がありますのでご了承ください
メンタルフォローに限らず、雑な仕事のやり方をしていると、いつまでも成長できないと思います
「よく分からないけど、こんな感じでいいかな?」と適当に済ますのではなく、まずは最低限のことから丁寧に1つ1つ実施することが大切だと思います

メンタル不調の従業員へのフォロー体制はこれが正しい!という正解はないと私は思います。
だからフォローするのはとても難しいです
しかし、難しいからと逃げていては解決にならないと思います
大切なことはメンタル不調になった従業員がしっかりと治療に専念することができ心身ともに健康な状態で職場復帰できるようにフォロー体制を作っておくことだと私は思います。
メンタル不調なのか本人の考え方の問題なのかを面談のときに把握することが大切だと思います

そのためには、どのような体制が必要かを会社全体で考えることも重要ですし、保健師も基礎知識やスキルを身につけることが大事だと思います。
また、産業保健師の管轄外のフォローまで全て対応せずにしっかりと情報共有やフォロー体制を関係部署と話し合いメンタル不調者のフォローをしていくことが重要だと思います