従業員のメンタルケアの方法として4つのケアを意識することが大事となります
メンタルフォローは対応が難しく、困ることがあるかもしれませんが、それぞれのケアが十分にできているかなと考えてみるといいかもしれません
4つのケアとは
- セルフケア
- ラインによるケア
- 事業所内産業保健スタッフによるケア
- 事業所外によるケア(病院・EAPなど)
私が実際の業務でどのようにして4つのケアについて意識しているか、どのように従業員に対応しているかについて書いていきたいと思います
企業によっては上手くケアができているところ、ケアを怠っているところもあるかと思いますので、保健師として企業の健康経営の考え方を見直すことも必要になるかもしれません
どんなことを意識して対応しているかの参考になれば嬉しいです
セルフケア
セルフケアとは自分自身がストレス反応に気づき、ストレスに対して処理できる能力のことです
ストレス反応が身体症状に現れる人や精神面に現れる人など様々です
このストレス反応に気づくために用いられるのがストレスチェックです
自分自身のストレス反応に気づかずにいる従業員の方は少なくありません
産業保健師は従業員に対してどのようなセルフケア方法があるかを講師として伝える役割でもあります
セルフケアの方法も様々なアプローチがあると思います
自分でストレス反応に気づきことができ、ストレス対処法を知っていることでメンタル不調を未然に防ぐことができます
私は、現在勤めている企業で新人、3年目、5年目、新係長に対してストレスコーピングの方法を講師として伝えています
全従業員対象でもいいと思いますが、今はマンパワーが足りず実施できておらず、保健師だよりなどに掲載のみで終わっています
ラインによるケア
管理監督者の役割として、部下である従業員のストレス要因を把握し職場環境等の把握と改善、部下の相談対応を行うことが求められています
そのため、管理監督者が職場にいる部下の異変に気づき早めのフォローをしなければなりません
しかし、部下の異変に気づくとはどのような異変に気づけばいいの?と思われている管理監督者も多いです
そのため産業保健師は、管理監督者に対して部下のいつもと違う異変に気づくポイントを講師として実施し職場でのメンタル不調の従業員の早期発見早期対応に努めることが大切だと思います
私は、現在勤めている企業で新任主任、新任課長、新任部長などの管理監督者に対して必ず実施しています
ラインケアをきちんと考えている管理監督者からは、個人的な問い合わせもあり、相談内容によって管理監督者に個別指導をしています
事業所内産業保健スタッフ達によるケア
産業保健師は従業員の健康保持増進のサポートをする役割です
そのために、メンタルケアについて講義をしたり、従業員からのメンタル不調の相談があれば面談を実施したりします
また、従業員のメンタル不調を未然に防ぐためにセルフケアやラインケアを従業員へ実施する必要があります
このような活動をすることで、従業員に「メンタルが不調になった時に相談できる場所がある」というのを認識させることがポイントだと私は思います
従業員に産業保健師の仕事の役割を理解してもらうためには、自ら従業員と関わる行動を取るのが大事だと思います
私は健康イベントでの関わり、再検査対応での関わり、健康教育、メンタル教育での関わりなど従業員との1つ1つの関わりを大切にしています
事業所外によるケア(病院・EAPなど)
治療を要するほどメンタル不調の従業員に対して、病院受診を勧める場合や、一度専門家(精神科医)の意見を求めたいときに活用します
また、従業員自ら職場に相談はせずに病院受診する場合もあります
従業員の中には
職場の人にメンタル不調を相談するのはあまり…
病院で受診するのも嫌だな…
と考えている方もいます
そのような従業員に対して事業所外のメンタルヘルスサービス期間(EAP)を紹介をしたりします
EAPとは?
EAPとは、メンタルヘルス不調の従業員を支援するプログラムのことです。厚生労働省が定める「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の中では、メンタルヘルス対策推進のために「4つのケア」が重要とされています。「4つのケア」とは、労働者自身が自らのストレスを予防・軽減する「セルフケア」、管理監督者の行う「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、事業場外の専門機関の支援を受ける「事業場外資源によるケア」ですEAPは、4つ目の「事業場外資源によるケア」に当てはまり、社外の機関によって行われます。従業員は自分の悩みを社内の人に知られることなく、専門家に相談することができます。もともとEAPは、アルコール依存、薬物依存が深刻化したアメリカで、これらによって業務に支障をきたす社員が増加したことに対応するために1960年代に発展したもので、日本においても1980年代後半から少しずつ浸透してきています。社員の抱える問題、職場の抱える人間関係などの問題を個人的問題として処理して来た日本の企業でも、これらの問題が出現したときの対応コストをリスクマネジメントとして考え、あるいは、さらに一歩進んでCSR(企業の社会的責任)の一貫と考え、EAPを導入する企業が増えてきています。
引用文献;厚生労働省ホームページ
EAPには、24時間相談窓口を設けているところもあります
また、相談した従業員の個人情報は会社にまで報告されないため、従業員も気軽に相談できます
EAPの周知方法について
全従業員へ定期的に周知
従業員の方からよく言われる意見で「そのようなものがあることを知らなかった」とよく聞きます。今まで勤めていた企業や大学でも同じようなことを言われていました。従業員のメンタル不調者の数は少しずつ上昇しているがEAPの利用者数は年に1−2件しかありませんでした。これでは勿体ない!と上層部の意見もあり、従業員へEAPを周知徹底をする方針になりました。しかし、ただ全掲示板や全員へEAPの周知メールを送っても、送る時期を考えなければその他のメールの1つとして見落とされてしまう可能性も高いです。私は、新年度の4月や長期休暇明けの5月・8月・12月やストレスチェック実施後に従業員の方へ周知メールや送ったり、掲示板へ掲載したりしていました。定期的に周知することで従業員の認知度も上がり利用率が少しずつアップしていくことが可能になりました。
個人へのアプローチ
従業員の中には、自分が悩んでいることを保健師や産業医など会社の人へ相談して知られたくないな…という人も少なくありません。そのような従業員へは1度EAPの案内を渡すようにしています。実際にEAPを利用してもらい従業員の判断で「保健師や同僚、上司へ相談してみようかな?」「自分にはEAPの方が合っていたな」と判断しても良いと思います。大事なことは、メンタル不調者の早期発見早期対応をすることだと思います。心身が疲れていることには気づいているけど…人に知られたくないな…と1人で悩んで症状が悪化する前に対応できるようにEAPの存在は従業員1人1人が理解することが大切だと思います。
さいごに
従業員のメンタルケアをする際、この4つのケアはとても重要になってきます
この4つのケアを上手く利用しながら、従業員のメンタルのサポートをすることができれば良いですが上手くいかない場合も少なくありません
産業保健師はこの4つのケアを上手く回すために企業にとって4つのケアの内、どの部分のメンタルケアが弱みなのか強みなのかを把握し、メンタル教育を考えていくことが大切だと思います
メンタルケアは介入も難しく、結果もすぐに出ません。しかし、諦めずに従業員の心身のサポートをするために何ができるかを考えて行動に移すことを、これからも継続していきたいと思います