仕事について

産業医との連携|仕事を円滑に進めるために意識すること

産業保健師として働く上で、産業医との連携が必要不可欠です

企業の規模によって常勤で勤務している産業医や月数回勤務している産業医など様々だと思います 

1人職場で働いている産業保健師の方などは業務で悩んでいることや困ったことがあった時に、直ぐに相談できる産業医の存在は心強いと思います

しかし、月に数回しか勤務していない産業医に相談をしたくても相談内容が多すぎて時間が無かったり、産業医も担当している業務に追われて相談できる時間が無かったり、自分自身が業務に慣れていなくて何を相談したら良いかが分からなかったりなど何かしらの理由で困っている産業保健師も少なくないと思います

私も今まで5-6名程の産業医に関わらせて頂き、このような悩みを経験した事があります

このようなことで悩んだ時私は下記の3点を意識して産業医に相談するようにしていました

  • 初めに決まり事(ルール)を産業医と決めておく
  • 相談する内容は、現在困っていることだけではなく次回の相談も必ずしておく
  • 産業保健師が対応できる内容であれば、ある程度対応しておく

この3点を意識して業務を行っていました

具体的にどのようなことを実施してきたかについて、書いていきたいと思います

産業医の仕事内容

①健康診断と事後措置

従業員は年に1回以上健康診断を受診することが義務付けられています。そのため、健康診断の結果を判断する人が必要となります。

産業医は、従業員の健康診断結果を確認し、健康管理ともに健康状態が就業に支障をきたさないかを判断しなければなりません。

具体的に説明すると

健診結果に問題がない(検査値が特に問題がない)従業員に対しては就業可

健診結果に軽度な異常はあるが、就業するにあたって問題なければ経過観察

健診結果に明らかな異常があり治療を要する従業員に対しては再検査

健康診断の再検査の結果、突発的な異常値でなく、慢性的な要因による結果であり就業困難な従業員は就業不可(休業指示)

という風に判定をします。

産業医の判定結果をもとに、産業保健師は再検査の対象になった従業員に対しては、再検査受診を勧め、経過観察と判定された従業員には保健指導をします。

この就業可・経過観察・再検査の対象となる健診データの基準値は産業医によって変わってきます。

私が現在勤めている会社では、産業医と話し合いをして基準値を厳しめに設定し、生活習慣の改善指導に力を入れています。

②職場巡視

産業医は、毎月1回以上職場を巡視することが求められています。

産業医は実際に従業員の職場環境を巡視し、適切な保護具を着用しているか(工場の場合)、安全な作業姿勢であるか、怪我などの危険性がある作業ではないか、従業員の健康を害する職場環境ではないか、それらの管理表が正確に記録管理されているかを確認し職場改善の指導を行います。

私は産業保健師として働きだした当初、必ず産業医の職場巡視に同行していました。巡視することで、従業員に自分の顔と名前を覚えてもらえるのでコミュニケーションを図りやすくなります。

また職場環境を実際に見ることで、職場の健康問題が理解でき、それに対して健康イベントや保健指導につながるアイディアが浮かびやすくなります。

③リスクアセスメントに対する評価

職場環境に起因する授業員の負傷や疾病を低減するために、それらの要因を事前に調査し、適切に措置を講じていく必要があります。そのために事前調査として、作業環境測定や作業内容、作業環境に基づく作業のリスクレベルの推定を調査する必要があります。

産業医は、これらの調査が適切に行われているか確認して、実施されている場合は調査結果を基に適切な措置が講じられているかを評価します。実施されていない場合は、速やかにリスクアセスメントを実施するように指導します。

これら安全衛生委員会や職場巡視などで協議されます。

④健康教育・労働衛生教育

多くの企業は、健康に関する集団教育で有害物質の取り扱いによる健康障害について、生活習慣の改善に関すること、メンタルヘルスに関することなどを教育しておりますが、このような集団教育の場に産業医も参加して健康指導を実施します。

⑤安全衛生委員会への参加

従業員の健康を関する事項や先ほどのリスクアセスメントに対して審議する場として、各事業場に安全衛生委員会が設置されることになっています。

産業医は安全衛生委員会のメンバーとして、企業の安全衛生体制の構築にも参画します。

⑥長時間勤務者に対する面談、ストレスチェック結果による面談希望者

産業医は長時間勤務者に対して、労働安全衛生法に基づき面談を実施する義務があります。面談の目的としては、産業医により従業員の勤務状況や疲労の蓄積状況、心身の状態を確認して従業員の疾患リスクを低減させることです。

ストレスチェックは年に1回実施されますので、その結果を基に高ストレス者から面談希望がある場合に面談の対応を行います。

産業医との連携

初めに決まり事(ルール)を産業医と決めておく

初めに産業医と産業保健師とで、ある程度の決まり事を決めていました

例えば〇〇のような事例に対しては△△のような対応をするなど、ルールを決めておくことで産業医が勤務していない日でも産業保健師のみで対応する事ができました

このやり方をすることで産業保健師経験が浅かった私にとっては本当に業務が楽になりました

特例に対しては、自己判断せずに産業医が来所した際に相談をすることを注意することを意識していました

ある程度のルールを決めることで、産業医の来所の際の時間を有効に活用することができました

このルールは、早い段階で決めておく方が業務をする上で楽でした

私は年度初めや年度終わりに次年度のルールを決めるようにしていました

相談する内容は、現在困っていることだけではなく次回の相談も必ずしておく

相談内容が多い程、1日相談で終わってしまったという場合があると思います

しかし、相談だけで終わってしまうと次週の業務についての相談する時間が無くなり次週産業医が来所した際、また同じように相談だけで終わってしまう可能性があります

それでは、あまり産業医の来所時間を有効活用出来ていないように思います

そのため、相談内容の優先順位を決めて必ず相談しなければならない内容はするようにして、優先順位が低い相談内容は次週に相談するなどの対応をしていました

そして、次週の産業保健師の動き(業務内容)を報告し産業医からアドバイスをもらうようにしていました

産業保健師が対応できる内容であれば、ある程度対応しておく

産業医にしか出来ない業務内容もたくさんあります

しかし、せっかくの産業医の来所日に産業医が業務に追われてその日1日が終わってしまったという日もあります

確かに本来の産業医の役割なので問題は何もないのですが、産業保健師経験も浅く1人職場で不安が大きかった私は「もうこんな時間?!産業医の先生に1番相談したかったことが、また相談出来なかった…」と思うことが多かったです

そのため産業保健師が対応できる内容は自分が対応し、対応した内容を産業医にダブルチェックしてもらうようにし、産業医の来所日を有効活用するようにしていました

産業医の存在

産業医の先生と仕事を一緒にさせて頂いて本当に学びが多くありました
従業員の方々から
「はりもぐさんたちみたいな保健師さんたちって産業医が上司なの?」
「産業医の存在ってはりもぐさんにとって、どういう存在なの?」
と聞かれたことがあります。この言葉を聞いて自分にとっての産業医の存在って何なんだろう?と考えるようになりました

頼りになる存在

1人職場で学校保健師・産業保健師として働いていた時は、仕事内容も分からないことも多く孤独を感じることも少なくありませんでした。

努力しても空回りしてしまうことも多くあり、落ち込むことも少くありませんでした。

「やっぱり向いてないのか?」「企業で働く医療職って本当に必要なのかな?」と思うことも多かったです。

そんな私の心の支えは、定期的に来社する産業医の先生でした。来社するたびに私の悩みを聞いてくれました。また、企業での産業保健師の在り方や職場巡視の見るポイント、保健指導方法、メンタルフォロー方法のポイントを丁寧に教えてくださいました。

また私が関わってきた産業医の先生方は「何か困ったことがあれば、産業医のせいにしていいからね」と必ず私を守ってくれていました。

産業保健師1年目の私にとって、この言葉は本当に嬉しかったです。また、産業医の先生に甘えてばかりでは成長できない。成長するためにはもっと努力や行動することが大切だとも思わせて頂きました。

常に最新情報を教えてくれる

私が関わらせて頂いてきた産業医の先生方は、常に最新情報を知っている先生方ばかりでした。

このことは、産業医の先生たちの中では常識かもしれませんが私にとってはとても、心強い存在でした。

その理由としては、医療現場で働いていた時は常に最新の医療情報を知る機会が多くありましたが、産業保健師として働き始めてからは、どんどん変わっていく医療情報について行けず、おいて行かれないようにと情報を調べたり、研修に参加をしたりしても、どうしても分からないことがあります。そのような時に、産業医の先生に相談をすれば必ず的確な回答を頂けました。わからないことを必ず答えてくれる存在がいることは、とても安心できます。

この安心感があるのとないのとでは、仕事に対するモチベーションも変わってくると私は思います。

サポートしてくれる

産業保健師は、1人職場も少なくありません。

その場合、人事部や総務部などの他部署に所属して産業保健師として働きます。

上司も他部署と兼務しているため、忙しくて産業保健師のサポートに手が回らない上司もいれば、上司としてしっかりと産業保健職をサポートしてくれる方もいます。

頼れる存在がいないことや、誰にも相談できない状況が続くと、ますます孤独を感じやすくなってしまいます。

私が、今まで関わらせて頂いた産業医の先生たちは、私がメンタルダウンしないように定期的に心身のサポートをしてくれました。

さいごに

産業保健師として働く上で、産業医との連携は必要不可欠となります。そのために、産業医の仕事内容を把握して、産業保健師と産業医が協力して従業員の健康管理および企業の安全衛生管理体制の改善に努めていくことが大切だと思います
「産業医の来所日が少ないから…」「産業保健師経験が浅いから…」など、出来ない理由や言い訳ばかりを並べたらキリがありません

出来ないことがあるのなら、出来るようにするために何をしていけばいいかを考え行動することが大切だと思います

みなさんも、産業医と連携を取りながら、より良い健康管理体制を築いていってください