仕事について

保健指導のポイント|産業保健師において重要な仕事!注意すべきこと

産業保健師として働く上で挫折してしまうのが保健指導だと感じます

しかし、保健指導は保健師の業務の中で最も重要であると考えています

保健指導は一人一人異なった背景があるため、決まった対応をすればいいというものではなく、何が正しいかわかりにくいです

私も保健師として働きだしてから、多くの事を考えさせられた業務となります

産業保健師として4年目になりますが、今でも悩みながら対応しております

保健指導を行う中で抑えておくべきポイントについてはあります

ただ、健康に関して注意するだけでは聞いてもらえません

不健康であることは従業員自身把握していると思います

保健師としてできることは、健康意識を身につけてもらうことが大切だと考えております

保健指導は人と人とのコミュニケーションであるため正解はありませんが、どんな考え方で取り組んでいくかを理解することで保健指導に役立つと考えます

今回の記事でどのようにアプローチしていくかのヒントになればいいなと思います

人にはそろぞれタイプがある

皆さんも人と接するといろいろな性格な人と出会うと思います

会話や教えるなどする場合、人によって意識的あるいは無意識に話し方などを変えているかと思います

保健指導においても人と人のコミュニケーションであるため、これらのことは同じとなります

コーチング式タイプ分け診断では、4つのタイプに分けられるとされています

コントローラータイプ

端的に結論だけを求める人が多い

自分の考えが正しいと思う節があり人の話を聞かずに、結論を急ぐ傾向も特徴的です

  • ダラダラと話さずに、伝えたいことをきちんと話すようにします
  • 保健師の回答に対して相手が疑問に対して、的確な回答を伝えるようにします
  • そのためには基礎知識は必ず必要となります
  • 高圧的な態度で来られても、イライラせずに対応することが大切です

プロモーションタイプ

明るく気さくな雰囲気な方で自ら様々な話を進んでしてくれるためコミュニケーションは取りやすいが、あまり話を聞いてない人が多い

自分の行動を認められると喜んで、どんどん頑張ります

  • 相手が話すことをしっかり聞いて、問題点を把握する
  • 相手のペースに持っていかれないように保健師側が舵を取るようにします
  • そして、本人のできているところに対してはたくさん褒めて認めてあげるようにします

アナライザータイプ

根拠に基づいた行動をするタイプです

失敗や間違うことが嫌いなため事前準備を怠りません

また、漠然とした指示を嫌います

  • 曖昧な返答ではなく「なぜ、〇〇が必要かというと▲という理由があるからです」と明確な答えを伝えるように注意する
  • 色々考えて言葉を発するため返答に時間がかかってしまいますが、相手のペースに合わせて、返答を待ってあげることが大切です

サポータータイプ

保健師の話をしっかり話を聞いてくれて、保健師の意見に対して自分には無理かな?と思うことでも相手の気持ちや反応を考えてしまい「頑張ります」と答えてくれる人が多いです

  • 相手の意見を重要視した保健指導を行うようにしています
  • 相手のペースに合わせて保健指導をすすめていくことを大切にします

保健指導をする際も、この人はどういうタイプなのかを意識しながら指導をするように心がけています

このポイントとしては、きっちりとタイプ別で分けて保健指導をするわけではなく、大まかにタイプ別で判断をしているということです

この人はこのタイプだからこういう説明!というのではなく

このタイプとこのタイプの中間ぐらい?ということもあります

その中で、個別性を重要視した保健指導を行うようにしています

保健指導の目的を見失わない

保健指導の目的はもちろん健康意識を持ってもらうことや健康に関してのアドバイスやサポートをすることです

保健指導をしていると、いきなり高圧的な話し方をしたり嫌味を言ってくる人がいます

そのような人ですと、こちらの話を聞いてもらえず、保健指導をすることが難しいことがあります

私も保健指導をする中でこういった人にお会いしたことは何度もあります

このような人に出会うと「何で、こんなひどいことをされないといけないんだ。好きにしたらいいんじゃない!」という感情に何度もなりました

しかし、それでは保健指導の意味がありません

保健師は従業員に健康意識をもってもらい行動を促す役割ですので、そこで「もういいや」とならず

保健師として伝えるべきことは丁寧に説明するようにします

たとえ全ては聞いてもらえなくて、少しでも健康に関して知ってもらえれば良いと考えます

気持ちは本当によくわかりますが、その場の感情に流されてこの目的だけは見失ってはいけません

健康に関する関心度を把握する

健康に興味がある人と、あまり興味がない人など様々です

そこで従業員がどれだけ健康に対する関心度を把握する必要があります

健康に興味がない人に対して健康の大切さを熱弁しても

従業員A

保健師がたくさん話してくれたな・・・・

と思われるだけで終わってしまう可能性もあります

これでは勿体ないと私は思います

健康に関して興味がない人は、なぜ興味がないか聞いてみます

関心がない人の多くは、不健康がどのような危険性があるのかを理解していないことが多いと思います

不健康時のリスクなどを説明して少しでも理解してもらうことで、健康に少しでも興味を持ってもらい、健康維持の大切さを知ってもらいたいです

人によって興味がない理由も様々のため、コミュニケーションをとることにより少しでも健康に興味を持ってもらうことが大切です

従業員ができるところからアドバイス

保健指導をするにあたり、従業員の出来るところからアドバイスをしていくことが大切だと思います

≪例えば≫

お酒を飲むことが大好きな人に対して

いきなり「禁酒してください」と伝えても

好きなものをいきなり全部やめるのは難しく、あまり響かず無理だと思いませんか

肥満の人に対して

痩せるために毎日5km走ってくださいと伝えても

運動していない人がいきなり走ることはできませんよね

その場合、私は従業員と話し合いをして、どのようなことからなら始めれるかを決めます

≪例えば≫

  • いきなり禁酒は難しいけど、量を減らしたり休肝日をつくってみてはどうか
  • 食事面で野菜を少し増やすなど改善できることがあるかも
  • まずは週に数回ウォーキングから初めてみる

など

従業員が「これなら、私でもできるかも!」と思えるところから取り組むようにしています

食事面の改善や運動面の改善、禁煙、禁酒をしなければならない状態と分かっていても、全て実践していくことは難しいところがあります

自分のキャパを超えているものに取り組んで行くと、いつか疲れてしまい逆に体重が増加したり、飲酒量が増加してしまい結果的に健康状態が悪化してしまう可能性もあります

そうなってしまっては意味がありません

従業員のペースに合わせて実施していくことが大事だと私は思います

深追いしない

保健指導をしていると、あまり健康に興味がない従業員や、健康意識が低い従業員、逆に健康意識が高い従業員など様々います

健康意識が低い人や健康にあまり興味がない人には様々な理由があります

例えば、特に食事や運動を意識して気をつけていないにも関わらず、検診のデータがあまり悪くない従業員など、病院嫌いな従業員です

中には、暴飲暴食もするし毎日飲酒をする、喫煙者でも検診データが悪くない従業員もいます

このような従業員の方に、ありきたりな保健指導を実施したところで

従業員B

別に悪いところなんてないから良いんじゃないの?

従業員C

マニュアルに書かれているからこんな話しているだけで、私のことなんて分かって話してないんだろうな

と思われてしまい、あまり話を聞いてもらえない可能性もあるります

確かに検診データの結果が悪ければ、健康面を意識するきっかけにはなりますが検診データが悪くなければ、健康面についてイメージがしにくいのだと思います

このような従業員に対して保健指導をする際、私は今後の健康リスクについての話までにして深追いをしないようにしています

そして健康リスクの話をして、従業員が興味を持った話からすすめていくようにしています

やはり、健康意識は人に言われて強制的に実施するものではなく、自分自身が意識をして改善していかなければ意味が無く効果もありません

しかし、検診データの結果があまりにも悪く直ちに病院受診が必要な従業員に対しては、産業医または上司から受診勧奨をしてもらい、対象の従業員には強制的に受診してもらうようにしています

保健指導例(禁煙指導)

①喫煙者に対してなぜ禁煙出来ないのか理由をしっかり聞く

そもそも、喫煙者に対して「タバコは、体に悪いので吸わないでください」と当たり前の保健指導をしても意味がありません。

喫煙者は、タバコの健康障害を分かった上で吸っている人がほとんどです。

保健指導をする上で重要なことは、喫煙者がなぜ禁煙出来ないのか理由を聞くことです。ストレス発散方法として喫煙しているのか。なんとなく喫煙しているのか。1日のルーティンになっているのか。タバコが好きで喫煙しているのか。様々な理由があります。

産業保健師は、喫煙者の背景に目を向けた保健指導をすることがもっとも重要です。

②禁煙する意思はあるのか。

禁煙意思がある従業員に対しては、喫煙がもたらす健康障害を説明し、禁煙外来を勧めることができますが、禁煙する意思がない従業員に対しての指導で苦戦している産業保健師は多いのではないのでしょうか?

 禁煙意思がない従業員に対しては、禁煙外来の情報提供は行い、本人からアクションがあるまで待つことが大事です。

ただ、いつまでも待つだけではなく産業保健師から積極的にコミュニケーションを図り信頼関係を築いていくことが大切です。

例えば、1ヶ月後~3ヶ月後ぐらいに「体調お変わりないですか?」とメールをする方法や、職場で出会った際に「体調はどうですか?心配していますよ。」と声をかけることもいいと思います。

初回面談で従業員に「よく、話を聞いてくれる保健師だな〜。この人が禁煙を勧めるなら、禁煙外来に行ってみようかな。」と思われればいいですが、そう思われるためには、話術や聞く力など様々なスキルが必要とされるため難しいです。

③従業員のペースに合わせながら健康改善へ誘導する保健指導

どのような保健指導でも、1番重要なことは相手のペースに合わせながら指導することです。

保健師指導でよくある失敗例なのですが、従業員の健康面を考えるがあまり従業員に対して「タバコの健康障害のことを本当に理解してますか?」「どうしてまだ喫煙を続けるのですか?」「このまま吸い続けると健康面が危ないですよ!」と保健師の思いだけを従業員に伝えてしまうことです。

保健師の気持ちは分かるのですが、健康問題に従業員自身が気づかないと保健指導をしたところで意味がありません。

本人が健康問題に気づき、問題に対して行動を起こすような指導をしていくことが保健指導です。

事例

30代男性 (係長)

喫煙歴10年

1日平均本数10~15本

喫煙する意思はない

残業時間 平均月40時間

3ヶ月前に、部署内のメンバーが入れ替わり残業が続いておりストレス過多で、本数が増加傾向にある。

現在まで、健康診断結果に明らかな異常データなし。

ポイント

この事例のポイントは3つあると思います。

①ストレスによる喫煙

②禁煙する意思なし

③現在まで、健康診断結果に明らかな異常なし

対象者の背景を把握

対象の従業員は、事例から分かる様に様々なストレス要因があります。

環境の変化、残業が続いている、役席のポジションであることがタバコの本数を増加しています。

健康診断結果も明らかな異常データがないことや禁煙意思もないことから、タバコによる健康障害を保健師が伝えたところで、対象の従業員が納得できるかは難しいところがあると思います。

対象の従業員への伝えること

まずは、対象の従業員の背景を理解した上で、体調を心配していることを伝えます。

「最近職場も変わりましたし、残業も続いてますね。ストレスも相当溜まっていると思います。そのことでタバコの本数も増加してしまっているという気持ちはよく分かります。

本来であれば、喫煙以外の方法でストレスを発散するのが一番いいと思いますが急に言われても難しいですよね。」

次に健康障害のリスクについて説明します。

「今はまだ、健康診断結果が悪くないので想像しにくいと思いますが、このまま喫煙を続ければ今後健康障害のリスクも高くなる一方です。

私は(産業保健師)健康があっての仕事だと考えております。〇〇さん(対象の従業員)の体調面も精神面もとても心配しております。」

適切な病院へ受診を勧める

「今後禁煙してみようかなと思いましたら、禁煙外来を紹介させていただきますのでいつでも声をかけていただければと思います。」

上記のように、対象の従業員の現状を理解して上で産業保健師は言葉を選びながら、保健指導をしていくのがポイントだと思います。

さいごに

保健指導で大切なことは、ただ場数を踏むだけではなく保健指導のよりよい方法を考えながら実践していくことだと私は思います

これは、保健指導に限らずどの業務にも言えることだと思います

ただ業務をこなしていくだけでは仕事に慣れることはできますが、成長していけるとは限りません

まだまだ、知識不足や経験不足を痛感する日々ですが少しずつでも成長していけるよう考えて行動していきたいと思います