6年間産業保健師として働いてきたなかで、立ち上げの経験もさせていただきました
産業保健師の立ち上げ
「自信が無いな。私には無理かも」
「立ち上げ経験の魅力って?」
と思う方もいると思います
立ち上げは初めての経験で苦労することは多くありました
現在、産業保健師を目指している方やスキルアップを目指す方の中には
立ち上げ経験をしてみたいけれど
自信がない
恐怖心がある
という方もおられると思います
今回は
私が立ち上げ経験をした時に実践したことについて
書いていきたいと思います
みなさんがこの記事を読んで少
しでも立ち上げ経験に興味を持つことができたり参考になれば嬉しいです
立ち上げ時に実践したこと
目標設定を決める
目標設定はとても大切です。私はまず、企業側に健康管理体制をどのように進めて行きたいかを確認しました。保健師が一方的にあれもこれも取り入れていったほうが良い!と伝えることも大切ですが、それだけでは、会社の意向が分かりません。
組織全体で健康管理体制を作っていかなければ、いずれ認識のズレが生じて苦労するこになります。
なので、まずは会社側が求める健康管理体制をしっかり聴取してそのニーズに合わしながら、従業員の健康保持増進のために必要な取り組みをしていくような目標設定を決めました。
現状把握
現時点での健康問題、メンタル問題を聴取して、問題点に対してどのような対応をしているかを把握することが重要だと私は思います。
これらをしっかり、聴取することで企業側が健康管理に対してどのような認識をしているかがよく分かります。
健康管理は大切と思っているが、何をすれば良いかが分からないのか。もしくは、あまり興味がないのかを把握することによって、企業側へのアプローチ方法も変わってきます。
何をすれば良いかが分からないのであれば、企業の強みと弱みを一緒に分析しそれぞれへのアプローチ方法を伝えることができますし、健康管理に興味がないのであれば、健康に働くことの利点を伝え企業側が興味を持った分野からアプローチしていく方法もあります。
法律関係はしっかり押さえる
健康診断や長時間残業者面談、復職面談、職場巡視、ストレスチェックの事後措置など法律で決まっているところをしっかり抑えているかの確認は大切です。
そもそも、法律で決まっている内容が疎かになっていることは問題です。
もし、法律で決まっていることを実施していない場合は早急に対応してもらうように伝えることが大切です。
役割分担を決める
産業保健師だけで健康管理体制を担っていくことは、マンパワーが足りないことや産業保健師だけで決定できない業務もたくさんあり、困難です。そのため、人事労務担当者や安全主任や総務部の方としっかり話し合いをして役割分担を決めることが大切です。
役割分担を決めることで、役割を全うするために健康管理について調べる機会も増えます。また、役割があることによりそれぞれの部署に責任感がうまれます。企業全体で健康管理体制について考えることが、よりよい健康管理体制を作る上でもっとも大切なことだと私は思います。
安全衛生委員会の場で方針を発表する
安全衛生委員会の場を借りて、企業全体で決めた健康管理体制についての内容をスライドにまとめ発表することで、今後の方針を再確認することを実施しました。
口頭だけの解決では、方針がわからなくなってしまう場合が私はあると思います。そのため、スライドなどで分かりやすくまとめることで見直すことができます。
またスライドにしておけば、今後健康管理について実施してきた内容や、意見を取り入れながら作成したスライドを修正または追加していくことで、よりよい健康管理体制を作って行くこともできます
立ち上げ経験で感じたこと
立ち上げ経験は経験した方がいい
立ち上げ経験のチャンスがある場合は、絶対に応募した方がいいです。
例え期間が3ヶ月や半年、1年と短くても経験した方がいいです。
理由としては、学びが多いからです。
立ち上げで大切なことは、企業側が健康経営をどのように進めていきたいかを、把握することです。
そのためには、しっかり話し合いをすることが大切です。
話し合いの場では、企業側が何を1番伝えたいか話に焦点を当てて聞くことがポイントです。
次に、企業側に対して意見を伝える時に産業保健師として基礎知識はもちろん必要ですが説明力が大切になってきます。
ただダラダラと説明するのでは意味がありません。
相手が理解しやすいような言葉を使い、分かりやすい説明をすることが大事です。
そのためには、図やデータを用いてPowerPointで分かりやすくプレゼンテーションする方法も必要です。
このように、産業保健師として大切になってくる聞く力・説明力・データ処理能力なども身につけることができます。
ゼロから始める方が仕事はやりやすい
産業保健師1年目の時は、健康経営や産業保健師の役割が明確にされている企業で働かせて頂きました。
産業保健の基盤がしっかりしていたため、産業保健について何も理解していなかった私にとっては、本当に学びが多くとても勉強になりました。
産業保健師について学びを深めていくにつれて「今のままの基盤でも悪くはないと思うがもっと、違う方法もあるのでは?」と思うことも増えてきました。
しかし、根付いている文化を変えようとするのは時間がかかる場合もあります。
これは、企業にもよると思います。
私が勤めていた企業では、保守的な考えが強くあまり変化を好まない企業でした。
そのため1つのことを変えるのにも、ものすごく時間がかかりました。
足並みを揃えることはとても大切ですが「もっと、やり方はあるのではないのかな?」とジレンマを感じることが少なくありませんでした。
立ち上げ経験ではゼロから基盤を作り始めるため、このようなジレンマは少なくなります。
また立ち上げたばかりなので、修正追加もしやすく他部署や所属部署と連携し試行錯誤しながら、基盤を作り上げていくことができます。
何もない状態から健康管理体制を考えるので、まずはどのような健康管理体制を求めているかを人事労務担当者と最初にしっかり確認することができます。
やはり、同じ目標設定を決めることはとても重要だと思います。
意見交換をする中で、はじめはお互いの健康管理体制の意見の食い違いで衝突することはありますが、しっかり話し合いをしてお互いの意見を取り入れることで、より良い基盤を完成することができます。
また、基盤を作り上げたばかりなので「もっとこうした方がいいのでは?」という意見もすぐに取り入れやすく、すぐに何度でも修正追加することも可能です。
0→1にする大変さはありますが、とてもやりがいを感じることもできました。
産業保健師は、1人職場も多く孤独を感じやすい業種でもあります。
しかし立ち上げ経験では会社全体で、よりよい健康経営を目指していくことで一体感を感じることができました。
他部署とのコミュニケーションの重要性を実感
私は、立ち上げ経験をさせて頂いて他部署とのコミュニケーションの重要性を痛感しました。
企業で働いていると産業看護職だけでは、解決できない事例や業務内容も多々あります。しかし、他部署とのコミュニケーション不足や、そもそも産業看護職の仕事内容が会社であまり認知されていない、もしくは必要性は理解しているがどのように仕事を進めるべきなのかが分からないなどという状態では、周りに頼ることも困難になってしまいます。
このような状況の中で、必死に基盤づくりをしようとしても周りからは「産業保健師が何かをしようとしているけど、その内容が必要かも分からない」「これは産業保健師の仕事という理解で良いのだろうか?任せてもいいのだろうか?」という考えになる可能性が高いです。
そのためには、他部署としっかりコミュニケーションを図り各々の役割を明確にし取り組んで行くことが大切だと思います。
他部署とコミュニケーションを図ることは、立ち上げの時だけに必要なことではなく普段の業務内容でも非常に必要になってくることだと思います。
自分に足りていない基礎知識やスキルが理解できる
立ち上げ経験をさせて頂いて、自分が主体となり健康管理体制のこといついて説明したり他企業の現状、現在の健康管理体制のあり方などを説明させて頂き現在の自分のスキルや知識不足な部分を痛感することができました。
やはり、自分が主体となり行動したり人に教えたりする機会を頂けたから自分に足りていない部分には気づけたのだと思います。
このような機会がなければ、気づけていなかった部分も多かったと思います。
さいごに
立ち上げを経験させて頂いた当初は、産業保健師が思うようにしていいよ。という空気もあり、有り難い気持ちはありましたがどこか孤独も感じ苦労することが多かったです。
そのため、データを用いて健康経営について説明したり積極的に従業員の方とコミュニケーションを図るようにしてきました。
このような行動を1ヶ月2ヶ月と続けていくうちに、従業員が健康経営は会社全体で取り組んでいくことである!という理解に変わってきました。
私は経験が浅いから無理かも…と思う気持ちもとてもよく分かります。私も産業保健師経験が浅く立ち上げを経験させて頂いた時はプレッシャーを日々感じていました。
しかし、はじめから諦めることは勿体ないです。
チャンスがあるなら、どんどん挑戦することが大切だと私は思います。
もし立ち上げの求人があればぜひ一度経験しておいたほうが良いと私は思います
規模の大きいところは…週5のフルタイムからは…と感じるのであれば週2−3勤務で規模の小さい企業からの立ち上げで良いと思います。
私は規模の小さい企業で立ち上げを経験させていただきましたが、とてもやりがいを感じることができました
今後も機会があれば、もう一度立ち上げ経験をしてみたいとも思います