仕事について

健康経営の取り組み方|産業保健師の観点から考えることは何か?

国民医療費の増大、生産年齢人口の減少に伴い、企業は従業員により健康に、より長く働くように取り組む必要があります

また、優秀な人材を確保して健康で長期で働いてもらうために健康経営の取り組みは必然とも言えます

では、実際にどのように取り組んでいるのか見てみると、大手などの一部企業では積極的に取り組んでいるところもあります

しかし、日本全国を見てみると健康経営に真剣に取り組んでいる企業はまだまだ多くはないと思います

健康経営優良法人認定制度(ホワイト500)の制度があり、これの取得を目指すのも一つの手ともいえます

保健師の業務には健康経営の見直しも大事な仕事になります

個人を見るだけでなく企業全体を改善することにより健康保持増進に繋げることも必要となります

では、保健師としてどのようにして健康経営に関わるかについて考えていきたいと思います

企業側が健康に対して興味を持たないといけません

そのために、保健師としてどのようなことをしていきたいか提案します

そして、それらの利点などを説明するようにしてアプローチしていきます

健康経営はすぐに結果として出にくいですが、行動していくことが大切になってきます

健康経営とは

優秀な人材を確保して健康で長期で働いてもらうために健康経営に力を入れている企業も増えてきています

「健康経営」とは

従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。

経済産業省では、健康経営に係る各種顕彰制度として、平成26年度から「健康経営銘柄」の選定を行っており、平成28年度には「健康経営優良法人認定制度」を創設しました。

優良な健康経営に取り組む法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業」として社会的に評価を受けることができる環境を整備しています。

なお、健康経営は、日本再興戦略、未来投資戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つです。

引用文献:経済産業省

健康経営の取り組み

メンタル研修の実施

私が勤務していた企業では、前期後期の年に2回のメンタル研修を実施していました

内容としては、入社1年目から5年目までの従業員に対してセルフケア(ストレスコーピング)関する研修会を開き講師をしています

本来であれば従業員の上長(管理監督者)に対してもセルフケアに関する研修を実施したいと考えているものの、実施できずにいます

そのため、管理監督者に対してはラインケアに関する研修を実施しています

現在勤務している企業においては、メンタル研修に力を入れているため、上司(人事部の管理職)と打ち合わせをしてどのような研修にすべきか

研修用の資料のすり合わせなどを行っています

そのため、資料作成も長ければ半年程かかる場合もあります

また、研修後にはアンケートを実施して従業員の反応をみて、次回の研修に活かせるようにしています

従業員の全員面談

どの企業でもなるべく全従業員と面談するように心がけています

産業保健師の業務において保健指導は大事な仕事になります

そのため、全従業員と面談することは良いことであると考えております

また、従業員全員と一人一人と話すことで企業が抱えてる問題も顕在化することもあります

ただし、従業員数が多い企業や保健師が少ない企業で全従業員と面談することは、とても時間がかかり労力を要します

産業保健師だけでは、仕事が回らないこともあるので人事部や労務部などの担当者に協力を得ながら業務を進行するようにしています

現在の企業では、健康診断の日程調整、従業員へのアナウンスを含め事務処理関係をかなり協力してもらっているので、非常に助かっています

保健師としては、健康診断の結果を確認し再検査対象者の抽出、受診勧奨、産業医との連携などを実施しています

企業によっては、全工程を保健師が担当することもあるので、とても大変になります

健康経営に力を入れている企業であればこのように協力的にサポートしてもらうこともあります

役割を分担することで企業として、面談を積極的に実施することは良い取り組みであると考えます

婦人科検診の受診勧奨

私が勤めている企業では、男性従業員よりも女性従業員の方が多いです

しかし、女性従業員の婦人科検診率があまり高くありませんでした

婦人科検診の重要性について女性従業員に対して講義を実施することも考えましたが、私が勤めている企業では従業員が各支店で就業しているため講義を実施することは難しいです

そのため、婦人科検診を受けるメリットについてのパンフレットを作成し各支店に配布しました

有難いことに、パンフレットは女性社員に好評で様々な問い合わせを頂きます

今後は婦人科検診だけではなく、その他の検診の必要性についてもパンフレットを作成も考えています

また、企業や就業環境によってはやり方は多々あると思います

健康経営優良法人認定制度の取得

健康経営を推進していくにあたり健康経営優良法人認定制度(ホワイト500)の取得を目指すことも良いと思います

ホワイト500を取得するためには各項目をクリアしないといけませんが、ホワイト500を取得していることで健康経営に取り組んでいるのか一つの指標ともなります

そのため、企業としてもメリットが多くあります

  健康経営優良法人認定制度とは

健康経営優良法人制度とは、地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度です。

健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受けることができる環境を整備することを目的としています。

また、本制度は、日本健康会議の「健康なまち・職場づくり宣言2020」の宣言4「健保組合等保険者と連携して健康経営に取り組む企業を500社以上とする。」及び宣言5「協会けんぽ等保険者のサポートを得て健康宣言等に取り組む企業を3万社以上とする。」を達成するための一助となることも目的としています。

なお、この取組は、令和元年6月に制定された成長戦略実行計画に基づいた取組の一つとして実施するものです。

第4回目となる今回、「健康経営優良法人2020」として、「大規模法人部門」に1481法人(うち500法人を「ホワイト500」とする)、「中小規模法人部門」に4723法人が認定されました。

引用文献;経済産業省

ホワイト500の取得を目指すにあたり

ホワイト500をすでに取得している企業であれば、認定制度について理解しているかもしれませんが

これから健康経営に力を入れていく、ホワイト500取得を目指す、制度について理解していない企業である場合は

ホワイト500を取得するにあたり、保健師としてまずはホワイト500はどいうものか、取得することによるメリットはなにかを企業側に伝える必要があります

企業として今後どのようにして健康経営に取り組んでいくか、健康管理体制を構築していく上でも参考になります

説明方法としては、今後どのような健康管理を取り入れていけば企業で働いている従業員が心身ともに健康に働けるかを企業側に自社で足りていない健康管理の部分を気づかせることが重要です

まずは、現時点のおける企業のフィジカル面やメンタル面の情報を伝える事ができるように資料も作成しておきます

そして、産業保健師が説明した後に企業側が興味を持っている部分に目を向けます

企業側が興味を持っている部分の健康管理から取り組んでいくことが大切だと思います

企業の意見を聞いて

「本当はもっとこういう取り組みをしたほうが従業員のためには良いのに」

と感じることもあると思います

しかし、産業保健師は会社に雇われている立場であるため、会社側と産業保健師側の意見をすり合わせる必要があります

健康経営に興味があまりない企業
まずは何から取り組むべき?

企業の中には、従業員にとって心身の健康が重要だと気づき積極的に休暇制度や健康イベントを実施して、健康経営に取り組んでいる企業もあります

しかし企業の中には健康経営にあまり関心がない企業や、関心はあるがどのように取り組んでいけばいいか分からない企業、ただ産業保健職を配置している企業など様々あります

このような企業で、産業保健師として働いていた場合「自分の存在って何なんだろう?」と孤独を感じやすく「産業保健師って思っていたイメージと違うな」と感じ退職を考えてしまうこともあります

このような理由で、苦労して産業保健師として働き始めたのに退職することはもったいないと思います

企業側が健康経営に興味があまりないのであれば、興味を少しでも持ってもらえるようなアプローチをしていくことが重要です

企業にとって緊急性が高いことから取り組む

健康経営の取り組み云々の前に、企業側が早急に対応し実施しなければならない問題を後回しにしている企業もあります

例えば、法律で決まっている内容を実施していないことや書類の管理がきちんとされていない場合や安全配慮義務違反になりうる可能性が高い事案などです

このようば場合は担当部署に必要性を説明した後、早急に対応していくように伝えていました

「こんなことってあるの?」と思われる方も多いと思いますが、意外と法律で抑えておかなければならないことを怠っている企業も少なくありません

理由としては「そこまでやらなければならないことを知らなかった」という場合も多いです

そのためにも、産業保健職も把握しておかなければならない法律関係は覚えておく必要があります

何に興味があるのかを確認

人事部や総務部、安全管理部門と健康経営について話し合いをしていると「もっとこうした方がいい!」「今は、そんな取り組みよりこっちのほうが優先でしょう?」と思うことが多い方もおられると思います

確かに、産業保健職が言う通りの取り組みが必要な場合もあります

しかし、そのことを全面に押し出してしまうと担当者側からしたら「健康経営ってそれをしたら本当にいいことあるの?」「何か、今までの取り組み方を否定されている感じがするな」などと思われてしまう場合もあります

これでは関係性に亀裂が生じてしまい、今後意見交換をしたくても話もまともに聞いてもらえず苦労してしまう可能性もあります

このような状況に陥らないためにも、企業側が何に興味を持っているのかをしっかり聞く必要があります

例えば健康経営という言葉に興味があるのか、従業員のメンタル不調者の人数の増加を気にしているのかなどです

企業側の興味がない分野から取り組んでも、産業保健職側の自己満足で終わってしまう可能性もあります

たとえ良い取り組みだったとしても、それではあまり意味がないのでは?と私は思います

企業全体で健康経営に取り組んでいくことが大切だと思います

実践出来ているところと出来ていないところを確認し、小さな取り組みから実践していく

まずは、健康経営の取り組んでいく上で現時点で何が出来ていて何が出来ていないのかを確認することから始めました

出来ている部分は継続していき、試行錯誤をしながら強化していけばいいと思います

出来ていない部分に対しては、出来るところから取り組んでいくようにしていけばいいと思います

健康経営に力を入れている企業では、新しい取り組みをどんどん取り入れている企業も多いです

このような取り組みを見て「我社でも実践してみたら健康優良企業になれるのでは?」と思い新しいことに次々と挑戦していくことはとてもいいと思います

しかし、色んなことに挑戦してみたはいいがやりっ放しで終了してしまう事が多く、中身が不十分になってしまうパターンも少なくありません

これでは、張りぼてのようになってしまい勿体ないと私は思います

そのためには、現時点のマンパワーでできることや継続していけることから実践していくようにしていきました

基盤づくりをしっかりして次のスッテプに進まないと、結局はやっつけ仕事みたいになってしまい健康経営とかけ離れてしまうと思います

さいごに

健康経営の取り組み方は、企業によって様々な方法が考えることができます

私が意識していることは、自分の働いている企業で必要な健康経営の取り組みを考えること、現在の人員で実践できる内容に絞ることだと思います

例えば、ウォーキングイベントなどは取り掛かり易いため、このようにできる範囲から始めることが大切です

そして、実施した内容を来年度も継続して、改善していくことで企業側にも大きなメリットがあると考えます

また、保健師としてのスキルも上がっていくと考えています

健康経営を改善していくには、他部署とコミュニケーションを取り連携し、それぞれの役割を決め企業全体で健康経営に取り組んでいくことが必要となります

大変なことも多々ありますが、その分やりがいもあると感じています

また健康経営に熱心に取り組んでいる企業もあれば健康経営という名前にしか興味がない企業もあります

このような企業に対して、健康経営の取り組みをアプローチしてもあまり聞いてもらえない場合もあります

そして「私って必要なのかな?」と思い孤独を感じてしまいます

そのような場合は、時間は無限ではありませんので無理に同じ企業で産業保健職として働き続けなくてもいいのでは?と私は思います

産業保健職は、成果が見えにくい職業です

そのため相手にしてもらえないことも少なくありません

しかし、だからといって諦めるのではなく話を聞いてもらえるようにするためには、どのようなアプローチが必要かを考えることが大事だと思います